エンビーはいけない

2022.9.29

 女性の嫉妬は分かりやすい。

男性の方が裏で足を引っ張り合う。

 一番、最初に入院した所で、Mちゃんと言う、綺麗な女の子がいた。

 彼女はみんなと違って、個室だった。

ある時、気付いてしまった。

彼女がかつらだということを。

 精神的なことから、彼女は髪がはえてこない。

 男性も悩むだろうが、20代の女の子が髪がないのは想像にかたいだろう。

 私はある事で彼女に嫉妬してしまい、大声で

「あの、ハゲかつらがよ~」

と言ってしまった。

 後悔先に立たずで、私は申し訳ない気持ちになり、お花と一緒に謝罪の手紙を書いて渡した。

 そうすると、お礼にパジャマと、綺麗な文字で、私に対して嫌な事は言われていないと書いてくれた。

 彼女はホステスさんだった。

 頭は良かったが、長女ということで、お父様に厳しく育てられ、家に居場所がなくなり、中学を卒業すると同時に市内に一人で越して来た。

 中卒で、身寄りもなく、それなりに生活するにはホステスさんになるしかなかった。

 彼女は事務をしていると皆に言っていたが、皆、知っていた。

 もう一人、背の高い、モデル体型の女性がいた。

彼女は自分がホステスをしてると、公言していた。

 彼氏はヤクザだろう。見てくれで分かった。

綺麗だが、話すと言葉の汚さにガッカリするタイプの女性だった。

 ある時、違う女性患者に

「のぞ美さんって、女優の〇〇に似てるよね」

と彼女の前で言うと、訊いてもいないのに

「私、ΧΧに似てると言われるよ!」

と言ってきた。

 私に負けたくなかったのだろう。

 そして、かつらの女の子はモデル体型の女性に対抗するかのように、ヒールの高いサンダルを履いて歩いていた。

 私は痛々しかった。身長が低くても、顔も中身も彼女の方が良かったからだ。

 夜に眠れずに二人で煙草を吸いながらいると

「のぞ美さん。私、実はかつらなんです。男性にも言えなくて・・・・・・」

に、私は

「それを含めて、愛してくれる人が良いよ」

と、どこまでも、私は馬鹿だ。

 一週間後、オーバードーズをして、危篤状態になり、3回繰り返したので、転院になった。

 今、元気にしてるかな?

互いに高め合う嫉妬ならば良いが、エンビーは良くない。 

 誰も幸せにならないからだ。

気を付けよう。

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