T君とMちゃん

2022.9.29

 ひょんな事から、私は入院している病院の側に住んでいるT君と仲良くなった。

 T君は複雑な家庭環境で、17歳だったが、高校には行っていなかった。

 父親違いの小学生の妹さんがいた。

 お昼の外出に遊びに行くと

「こんな綺麗な人が家に来たの初めてだ」

なんて、お世辞を言って部屋に招いてくれた。

 お母様はコンパニオンのお仕事なので、お昼は家に居て、私に紅茶を入れて下さった。

 そして

「ウチのT。17といっても、まだまだ、子供だけど、夜の仕事で、実家には妹しか、預けられなくて、真夜中に一人置いて行くのが心苦しんです」

と私に話してくれた。

 そして、私はT君に

「高校だけでも、卒業したら?」

と言うと

「母さん、いくら美人とは言え、40代だぜ❗20代の若い子に仕事持っていかれて、いつまで続けられるか分からないから、妹いるし、俺が働かないとどうするの?」

 私は返す言葉がなかった。

 T君はアルバイト3つ掛け持ちして病気になってしまった。

 上手く喋れないのだ。

私は慣れたから、彼が何を言いたいのか分かるが、初めて会った人なら、分からないだろう。

 病院に帰ろうと、T君の部屋を出ようとした時、ともさかりえちゃんのポスターが貼ってあり、私は気付いてしまった。

「T君、もしかして、Mちゃんの事が好き?」

と訊くとコクりと頷いた。

 T君の事は応援したいが、Mちゃんは恋愛どころではなかった。

 Mちゃんも、また、複雑な家庭環境で、両親が離婚して、それぞれにパートナーがいた。

 Mちゃんはお母様側に行っていたら、お父様と新しい女性が無理心中をして、女性は亡くなったが、お父様は死に切れずに警察に捕まった。

 まだ、市内ならば良いが、Mちゃんは小さな村に住んでいたから、噂は広まり、心配になったお母様が緊急入院をさせたのだ。

 不思議な事にT君とMちゃんは主治医が同じだった。

 悩んだ私はその主治医に相談した。そうしたら

「主治医の私が駄目だと言ったとTに伝えてくれ。なら、のぞ美さんも困らないだろう」

と。

 私はMちゃんにその事を伝えた。そして、二人でT君の部屋へ行った。

 Mちゃんが二人にして欲しいと言うので、私は部屋を出た。

 5分ほどで、Mちゃんが出て来た。

 T君の恋は終わった。

タイミングと言うのも時にはある。

 私はT君とMちゃんにはそれぞれ幸せになって欲しいと強く願った。

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