コネで生きるとは

2022.12.11

 私は函館山ロープウェイの料飲部でパートで働いていた。

 3Fのキャッシャー責任者兼ウェイトレスをやっていた。

 私の仕事振りに社員にならないかと誘いがあったが、音楽で身を立てたい目標があったので、お断りして、2年が経った。

 ある時、前にアルバイトで来ていた女の子がまた、やって来て、社員になるという。

 実はその女の子のお母様がスナックの雇われママで、当時の専務の愛人だった。

 よくあるお話しだ。

 その女の子は高校を中退していて、その愛人が専務に

「ウチの娘を社員にして〜!」

と、ベッドで泣いてすがったらしい。

 課長やマネージャーは会議で

「次は中田さんにするべきだ!

そんな事情で、社員にするなんて駄目だ!」

に、長い物には巻かれろ主義の部長は反対した。

「社員に出来なければ、過去最高の時給にするべきだ!」

にも、人件費を削減したい部長は首を縦に振らなかった。

 料飲部の部長は調理師としては立派だったが、部長の器では無い人間だった。

 料飲部の若い女の子を食事に誘い

「俺の悪口言っているヤツはいないか?」

と、頭の悪い女の子だから、全て話してしまい、次の日に

「オマエ、俺の悪口言っていたんだって!?」

という始末。

 口の堅い私は

「中田さん。今度、食事行こう」

とは口ばかりであって、一度も連れて行ってもらった事が無い。

 部長だって、収穫の無い女にお金は出したく無いのだ。

 会議では部長と課長·マネージャーと言い合いになったらしい。

 私がキャッシャーへ行こうとすると、主任が先に行ってしまい、周りは私を腫れ物に触るかのように扱かった。

 調理師の男性は

「○○が悪い訳ではないからな」

と、私にその愛人の女の子を庇う様な事を言ったが私は

「貴方が私なら、どうする?」

と、訊きたかった。

 自分より、仕事が出来ないだけでは無くて、ピーチクパーチクお喋りばかりして働かない人が働いている人より、給料を貰うのに、何とも思わないのかと。

 調理師とは男社会だから、女性が出世するのには腹を立てる。

 その女の子が社員になっても、自分を越される怖れはないが、私が社員になると、怖いからだ。

 その癖、私には男として、嫌われたくは無い。狡いものだ。

 専務も用事があって、総務部に来た私に

「座りなさい。疲れたでしょう」

と余程後ろめたいのか、気の遣いようである。

 ならば、始めから、馬鹿な水商売の女を愛人にするなよと呆れてしまった。

 その愛人は私よりも、見劣りする女だった。だから、愛人止まりなんだよと感じた。

 色んなコネクションがあるだろうが、仕事はしない人より、する人に多くお金を与えて欲しいと、経営者には切に願う。

 一生懸命、働いている人が働かない人より、安い賃金はオカシイだろう。

 私は事情があって、辞めたがその後に部長がその愛人の娘に注意すると

「どうして、○○ばかり注意するの?」

と言って、秋頃に辞めたそうだ。

 部長も人の子だ。私が辞めて、罪悪感があったのだろう。

 益々、その女の子を注意するようになったそうだ。

 たかが、コネ入社。

しかし、コネ入社が招いた代償は大きかったようだ。

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