アタシ・血迷う

2023.1.28

 私は好きになると、突拍子もない事をする。

家庭科で実技は0,テストの点だけで5をもらっていた。

タイトスカートを作った時も履けたもんじゃなかった。

 そんな私が好きな男の子にバレンタインまで手編みのセーターを編むなんて、今の私は

「やめておけ」

と言ったであろう。

 編み物屋さんで、前に話題になった、原田龍二さんがモデルになっているセーターの編み方の本を買って、毛糸と針を買い、家でも仕事の休憩時間でも編んだ。

 マフラーも編んだ事が無いのに、恋のパワーは人を盲目にする。

13日の夜、編んだは良いが、袖が通らない。

編み物の得意な母に泣きついて、どうにか着れる様にしてもらった。

母は誰にあげるの?と訊きもせずに直してくれた。

 そして、知り合いを通して渡してもらった。

今思うと、とても重たい女だったろう。

 後日、その知り合いから

「あいつから、のぞ美さんにって!なんだろうね~」

と包みを受け取った。

私は陰に隠れて、ワクワクしながらその包みを開けた。

なんと、私が編んだセーターが入っていた。

 返すつもりならば、捨ててくれ~とルビーの指輪が頭で鳴った。

私は次の日、そのセーターと編み物一式を会社のゴミ捨て場に入れた。

 慣れない事はするもんじゃない。

私はそれ以来、編み物はやらなくなった。

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