喧嘩にならない母

2023.2.2

 母とは喧嘩にならなかった。

ある日をきっかけに母の態度が変わったのだ。

 私が文句を言うと

「お前はそういう事言うのかい?私だって、私だって、私だって、ブー!」

といった感じで、笑ってしまうのだ。

 ある日とは母がキレて、私に馬乗りになり、平手打ちを10発喰らわせた。

 さすがの私も

「痛い!痛い!」

「当たり前でしょ❗殴ってるんだから❗殴られたら誰だって痛いのよ❗」

といった事があった。

 その日を境に私が文句を言うと笑わせる方法を取る様になった。

 認知症になった母はまるで赤ん坊だった。

「そこの、山形さん。ほら、八百屋の曲がった所の西山さん・・・・・・」

「山形さんって誰❓八百屋さんって何処❓西山さんって誰❓」

と訊くと、目をまあるくさせて、キョトンとするのだ。

私は

「何言ってるかさっぱりわかんな~い❗」

となる。

 病院に居た時は余程お腹が空いていたのだろう。

お店のハンバーグのチラシを丸めて、くわえたらしい。

 現金をあげると一番喜んでキスしてきた母だった。

 母は偉大だなぁとつくづく思う。

コメントを残す