性の捌け口

2023.3.18

 私がホテルのフロントで勤めていた時、明らかにシングルで泊まったのに、中途半端な支払いをして行く人がいた。

 ビデオや酒類は別料金だから、先輩に何故かと訊いたが黙りを決め込む。

 あるサックス奏者がホテルに泊まった。

 お手洗いでその男性とすれ違ったらジッーと私の事を見ていた。

 私は会釈だけして、通り過ぎたが、その男性も中途半端な金額を支払って行った。

 フロントの男性陣は明らかに不満気なのを押し殺すかのような対応だった。

 そのホテルを辞めて、アクセサリーショップに勤めた時に知り合いになったひとつ年上の女性とハンバーガーショップへ行った時、そのミュージシャンと寝たと言う。

 「自慢にならないけどね」

と自慢気に語る彼女は単なる性の捌け口にされただけで、憐れだった。

 もしかしたら私が彼女になっていたかも知れない。私に限ってそういう事はあり得ないが。

 普通のサラリーマンでもコールガールを呼ぶ人がいる。

 私は日勤だけだったので、夜の様子は分からないが柱の陰に隠れた女性が夜勤の人の目に止まり、女性を連れ込んだ男性から、シングルとダブルの半分を貰う事になっていた。

 同じ男としても、家庭がありながら、地方へ行って女性を連れ込む男性には腹が立つのだろうがお客様だから、一応

「ありがとうございます」

と言いながらもはらわたが煮えくりかえるのをこらえて頭を下げる。

 単なる性の捌け口同士の関係程、惨めなものはない。

 誰も見ていないと思うのだろうが、ちゃんと見られているのだよ。

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