ウェイトレス

2023.4.5

 私は22~24歳まで函館山でウェイトレスをしていた。

 面接は当時の課長で

「急ですまないのだけど、明日から来て欲しい❗」

と、見た目とほんのちょっとの会話で採用になった。

 課長が主任に

「明日から、22歳の女性が来るから宜しくね❗」

と伝えていたが、27歳の主任の男性が私を見て

「30超えていて、22だなんて言ってまで、ここで働きたいのかよ、と正直思った位、大人に見えたんだ」

と、仲良くなって一緒に食事に行った時に言われた。

 始めは眼鏡を掛けていたが、厨房の皿洗いに曇るので、コンタクトにした。

 宴会では女性社員はやらないで、男性ばかりなのに疑問を持った私はビュッフェの皿などを準備した。

 始めは調理師達も、女の私が準備するのを嫌がったが、主任が私担当に任せてしまい、私も宴会に出る事になった。

 女性は私だけだった。

コンパニオンを呼ぶ人もいたが、制服が違う為、私にはお客様も一目置いた。

 観光客が多い為、函館山で働くという事は函館、北海道、もしくは日本の顔になる。

どうでも良い接客をすると、日本人はこの位かと思われてしまう。

 単なるウェイトレスならばAIで良いだろうと言う方もいらっしゃるが、お客様の中には私に持って来て欲しいと言う人もいたから、AIは私の代わりにならない。せいぜい私のクローンを作らなくては駄目である。

 考えられないくらい忙しかったから、私のクローン10体くらい欲しかったが。

 中には

「サブ(北島三郎さん)ちゃんの家はどこですか❓」

とか

「あそこに見えるのが、大雪山❓」

等と言う、観光客もいらっしゃる。

 パートなのに、レジの責任者になった。レジ締めは私の担当。一円の誤差も許されないが、お客様でお釣はいらないと言って下さる方もいた。

 夏場の繁忙期にはランニングハイになり、皆、ヘラヘラ笑い出すのだ。それくらい忙しい。

 正直、調理師には無精髭を生やしている人もいたが、ウェイターは皆、きっちりしていたし、太っている人はいなかった。人に見られるとはこれだけ差が出るのである。

多分、万歩計を付けていたら、10万歩は軽く行くだろう。

 部長が調理師だった為か、出来が悪い人で、只でさえ、厨房とフロアーの人間関係は余り良くないのに、飲み会も一緒にやらない。

私はそれぞれの飲み会に参加した。酒が強かった為、3次会まで、女一人で呑んでいた。男性社員がバッタバッタ倒れるのを介抱しながら、酔いがさめる。

 気づけば朝になっていて、一旦、家に帰り、シャワーを浴びてまた、出勤。

 今では考えられない体力だった。

 私は痩せていたので、お客様にビールジョッキを25杯とか持って行くと、お客様の方が驚いて、手を差し伸べて下さるが私は力には自信があった。逆にビールジョッキを取られるとバランスが崩れて危ないのである。

 意地悪なお客様もいて、良くヤられたのが、私の方を向いて

「綺麗ですね~」

と言って踵を返して、窓を向き

「夜景が・・・・・・」

と言った男性が多かった。ニタニタ笑いながら。

お客様は何を言っても良いと思い込んでるバカな男性だ。言うだけ私に嫌われるのに。

 ウェイトレスやウェイターに雑な態度を取る人とは私は友達になりたくはない。

 見ている人は見ているのだよ。

コメントを残す