惑(まどろみ)の途中

2023.5.7

 「これで最後」

 私はマイルドセブンを揉み消して、女子高生の群れを眺めていた。

 「あれから10年か・・・・・・」

ー今は亡き、純ちゃんと、高校の頃、親友だった、哲ちゃんと、私ー

 私は不勉強で、高二で進学級から一般級へ落ち、惑ろ気な日々を送っていた。

 そんな夏の終わり、雨が降っていた。

 家に帰ると、何気なくTVをつけニュースを観ると、全身、鳥肌が立った。

 一年の頃、同級生だった純ちゃんが、交通事故に遭って重体だ。何かの幻想(まぼろし)を見ているような、宙に浮かんだ感じだった。

 その夜は一睡も出来ず、学校に行く。

 遅刻がちの私には珍しく、授業前、登校だ。

 前同級生が集まって、純ちゃんの話をして興奮していた。

「亡くなったんだって」

「どうする?」

「私達、落ち組だからさぁ」

(関係ねぇだろ!)

私は心で言った。

 ベルが鳴り、クリスチャンの学校だったので、朝礼に校長の話しがあった。

 純ちゃんの名前が出ると、私は泣いた。

 その時、回し手紙が届いた。

ー何も出来なくて、ゴメンね。元気出してねー

 3日後、献花式があった。

代表して、哲ちゃんがお別れの挨拶を泣きながらした。

 哲ちゃんは私に

「他のクラスの連中は他人事だと思っているから、わざと泣いた」

に、私は演技だったの⁉️と驚いた。

 みんな良い人ばかりだよと私は思った。

 ー「あれから10年か・・・・・・」ー

 哲ちゃんは東京の大学へ行き、卒業して結婚、一児の母になっていた。

 文通が始まり、私は純ちゃんの話しを書いて

「良い人は早く逝くよね」

「そんな事無い!」

の返事に純ちゃんを否定された気がした。

 私は

「余りキツイ事書かないで」

と返事した。

 その手紙の返信は未だに来ない。

 また、友人を私は失った。

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