2023.5.11
私は父にいつも
「俺の娘なら、男なんかに負けるなよ❗勉強もスポーツも一番になれ❗」
と言われて来た。
「男の後ろを歩くなよ❗お前が前に行って男を引っ張れ❗そこいらの男よりも出世しろよ❗女だからって、男に負けるなよ❗何でも一番になれ❗」
と、何度も言われた。
そのせいで、気が強すぎる女になってしまった。
父は警察の部長と知り合いかと思うと、相反するヤクザの組長とも友達だった。
函館の街を歩くと必ず父の知り合いに会う位に顔が広かった。何処で働いても
「中田さんの娘さんね。なら、仕事出来るね」
と言った具合である。
何処へ行っても、そこのお偉いさんと知り合いだった。
父が23の時の娘なので、家に帰って来ない父に仕事場に会いに行って、二人で街を歩いていると、必ず父の新しい愛人と思われた。
皆、まさかこんなに大きい子供が居るとは思わなかったからである。
不倫ばかりする父を憎んでいながらも、仕事が出来る父を尊敬する何とも言えない複雑な感情が私の中にあった。
父は女としてではなく、人として私を育てた。
母が男の子の玩具ばかり買って来る父に呆れて怒った位である。
だから、私は結婚を考えた事がない。良く女の子が白いウェディングドレスを着る夢を見るが私は考えられなかった。
段々と大人になると、周りの男性の目が女性として私を見るのが不思議であった。
直ぐに結婚して会社を辞めるだろうと思われたから、仕事がやりにくかったし、飲み会に誘われると、周りの男性がバタバタ倒れて行くので、介抱していつも酔えない。
酒が弱く見られるのも困ったものだ。
そして、仕事を兎に角やる私に周りは皆、驚いていた。
倉庫から、ビヤ樽を持って来たり、円卓を持って来たりする華奢に見られる私に周りの男性は目をまあるくしながら、誰も何もしなかった。
重労働が男の仕事と言うならば何故、皆、私より先に気付いて働かないのだ❓
ただ驚いて黙って見ている男よりも、女ということで給料が低かった。
宴会の準備を私一人で全部やった。普通は男でも、3人掛かりのところをだ。
そして、男がやらない休憩室の掃除まで、やった。
それでも、女ということで給料は男よりも、低い。
父には女性の給料が低くて、昇進の機会もなかなか与えてもらえないという事だけは教わらなかった。
何故なら、父は男だからである。女が社会で生きて行くのがどれほど大変かは父には分からなかったのだろう。
そこが抜けていたところだった。
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