妄想フィアンセ Vol.54

2023.7.7

 「汚れ切ったら、自分の身の皮をナイフで削り落とす覚悟が無いと駄目なのよ❗」

俊彦は下を向いた。

「痛いだろいな」

「身体よりも、心の方がね」

と私は呟いた。

「相手を傷付けたら、その何倍も自分に痛みが返ってくるものよ・・・・・・。俊彦は優しいから分かるでしょ⁉️」

歳を重ねると、必ず誰かを傷付け、誰かに傷付けられる。

私達はその事を痛い程、理解していた。

「一度切りの人生だから、必死に生きていかないと」

「ノンちゃんは刹那的だな。少し危うい気がするよ。そこがほっとけないところでもあるけれどな」

 時計は午後1時をさしていた。

「戻らないと。明日、ライヴでしょ⁉️」

「うん。もう少し一緒に居たい」

「駄目だよ。若い頃みたいに無理はきかない身体なんだから、帰ってゆっくり休んで」

俊彦は残ったコーヒーを飲み干して、後ろ髪を引かれる思いで私のアパートを出た。

      ・・・・・・続く

コメントを残す