2023.7.15
一番最初に入院した 大学病院に ワイルダーと あだ名をつけられていた ドクターがいた 白衣の前ボタンを 開け ひらひらと なびかせながら 病棟に入ってくるから ワイルダーに受け持たれてない患者も ワイルダーが入ってくると 皆 黙ってしまう ワイルダーは 自分の担当患者じゃないのに 名前をしっかり覚えていて 中卒でホステスやっていた きれいな M ちゃんに おい M お前 色気 使って若い男性 医師をたぶらかして玉の輿に乗ろうだなんて思うなよ とか 大学生の男の子に お前 入院してるから っていい気になって 単位 落として 留年して 親を泣かせるなよ と ズバズバ言っていく そして 自分の担当患者に 本当は前置きがあったのだろうが お前は絶対治らない と はっきり言った しかし ワイルダーは 患者 みんなから好かれていた ワイルダーの打つ筋肉注射は 注射針を刺したのもわからないぐらい 痛みがないのだ 本当は 研修生の時 手先が器用で 外科医になろうと思っていたらしい くらい 手術の腕が 良い先生だった しかし 精神的に苦しんでいる人を助けたいと 精神科医を選んだのだ そして 本当は繊細で 優しい気配りがある 私が 夜に 具合を悪くした時 のぞ美さん。 注射打つけれども 私しか ここにいる 看護師か どっちに打って欲しい と聞いてきた 大学病院では 筋肉注射を 腕ではなく お尻にするのだ 腕にしてしまって 腕が上がらなくなる可能性があるから 必ずお尻にする決まりがあった だから 男性である自分の前で お尻を出す 女性の気持ちを 考え 女性看護師を わざわざ連れてきて 私に選ばせたのだ そんな優しさもある しかし ある歯科に 来た 患者さんで 心療内科か 精神科に行きたいんだけれども 人目が怖くってと 歯科の先生に 相談したら歯科医は 安心させるために あ~ちょっとお話を聞いて 薬をもらって 帰ってくるだけですよ だから 心療内科に行った方がいいんじゃないですか と言った そして その患者さんは ワイルダーの 治療を受けた ワイルダーは 30分 近く話をこんこんと聞いた そしてその患者さんが 私 5分だけ話を聞いて薬をもらって帰れる って聞いたんですけどと言ってしまった ワイルダーがそれは 誰が言ったんですか と聞いたら ここの歯科の先生 ということで 医局にやってきて その歯科医の 胸ぐらを掴んで 俺は 真剣に 患者に向き合ってるんだ 適当に見て 薬 やるだけの医者じゃない と殴りかかりそうになったところを 周りの医者 たち が 止めた ことがあったと聞いた ワイルダーは チェーンスモーカーだった 当直の時 入院患者と一緒に 食後の タバコを一緒に吸いながら 談笑していた ある患者が 〇〇君は どんな風に見える と聞いて こいつは 臆病者だな とか 一人一人に聞いていった 次は私の番になり 私に聞くなよと 内心思っていた 案の定 じゃあ のぞ美さんは と聞いたら M ちゃんですら ボコボコに言われたので 何を言われるんだろうと ビクビクしながら 黙っていたらん~ 実に 妖艶だな ~の一言で 私も 周りの患者も ハッとなって止まった 私は 今 褒められたのかと 考えた なぜ私にだけ 優しい言葉をかけてくれるのか とても不思議だった 大学病院を退院し しばらく 病院を転々としていた ある時 救急車で 大学病院に行くと 担当が ワイルダー だった 私は 気が動転していたので 処置室から走って出てた時 両肩を掴まれて 今日は 何とか帰って寝なさい 明日1日 何とか寝て待ちなさい 日曜日に J 先生が 当直 だから 日曜日に救急車でまた来なさい と本当は教えてはいけないのだろうが そう言って私を安心させてくれた その時の当直が ワイルダーではなかったら 私は今頃どうなっていただろう 考えるだけで 恐ろしい ワイルダーと J 先生は 仲がいい関係だったらしい だから私のことも 覚えていたし 心配してくれたのだ ワイルダー とあだ名がつけられたのは 外見の 悪っぽいところだけで 内面は 本当は繊細で優しい ドクターだった
ワイルダーに 今も感謝している
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