誰にも言えなかった

2023.12.17

 私は一人娘だった。

周りからは、両親に溺愛されて、優雅に暮らしているのだろうと誤解を受けていた。

 実は、父が愛人を作る度に家を出て行き、別れたら家に来て

「ここは俺の家だー❗」

と、言いながら、母に暴力を振るった。

 私には流石に手を挙げられない事を知った私は母の前に仁王立ちして、守った。

 学校の先生にも、同級生にも言えなかったし、社会人になっても、同僚や上司にも言えなかった。

 お付き合いしてくれた、彼氏にさへも言えなかった。

 とうとう、私の手には負えないと、感じて警察に電話した。

 警察官に父が連れられる時に

「のぞ美、おまえが呼んだのか❓」

と、怒りならば未だしも、笑顔で自分のアパートに帰って行く父のあの笑顔が、父が亡くなった今でも、脳裏に焼き付いている。

 私は父を警察に売り飛ばしたのだと、思ってしまった。

 あの笑顔だけは、未だに忘れられない。

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