2024.6.16
私の母は私に何も言ってくれずにあの世へ逝った。
父も同じくである。
父は奥尻島出身だ。
母は秋田県出身である。
何故、出逢ったのかというと、父は車で1周20分で回ってしまう奥尻島には居たくなく、両親に頼んで中学校でたった一人で函館に来た。
母は周りから見ると長女で年の離れた弟二人に妹がいると思われていたが実は養女なのだ。
母は本当は次女なのだ。
しかし、家族の顔は知らないし、姉の名前も余りよく分からない。
母の母がまず姉を産んだが0歳で亡くなってしまった。
母の母が私の母を身籠っていた時、母の父は戦争で外国の小さな島で亡くなった。
だから、母は父と姉には一度も会っていない。
母の母が他のお母さんに
「ウチの赤ちゃんをあやしていて下さいませんか❓私、少し用を足したいので」
と違う赤ちゃんをあやしていた時、何かショックなモノを見て心臓発作で亡くなってしまったのだ。
だから、母は多分、おっぱいくらいは飲ませてもらっていたかも知れないが0歳で家族全員いなかった。
そして、父方の兄弟夫婦の養女として育てられた。
だから、本当は第1子は長男坊である。
本当は妹は長女である。
母も高校まで行かせてもらって、家に居ずらかったのだろう。
函館に働きにやって来た。
父は大学に入るも、大学教授が3流大学生にまるで東大の生徒に教えるみたいに難しく教えていたので
「俺なら、勉強に興味が無い学生にもっと面白おかしく教えるぞ❗なんで、こんな教え方しかしないのに学費払わなければいけないのだ❗」
と、退学して、自動車修理工場に勤めながら、タクシーの運転手を経て、自動車のセールスマンになった時、母が事務員をしている会社に行って出逢ったのだ。
お互いに一目惚れだろう。
父の住んでいた3畳の下宿屋に直ぐに同棲して、そのまま結婚した。
付き合った期間が全く無いのである。
父と母は二人揃って
「のぞ美。おまえが出来たから結婚したんじゃ無いんだからな❗父さん、婚姻届を1週間出し忘れていたんだからな❗」
と言うが私はそんな事どうだって良かった。
父と母が愛しあって私が産まれたから、それだけでとても、嬉しかった。
今でこそ、授かり婚と言われて当たり前になっているが、私の産まれた頃は出来たから結婚する事が恥ずかしい事だった。
父は中学校に入る前に一人で戸籍謄本を出せる人間である。
それに両親は私には嘘は言わない。
父が仕事が忙しくて婚姻届をポケットに入れたまま、母が
「あなた。赤ちゃんが出来た❗」
と言って、忘れていた事を思い出し、慌てて市役所に届けたのだ。
私が女の勘が疼くというのは父は幼い私に母と出逢う前の好きになった女性の話しを全てしてくれたが、母は一度もしてくれた事が無い。
私は幼いながらに母は父と逢う前に一度、大恋愛をしただろうと思っているのだ。
それが私の女の勘である。
私はそれとなく
「母。父と出逢う前にどんな人を好きだったの❓」
と訊くと
「う~ん。たくさん好きになった人はいるわよ。学生の頃に電車が同じだった違う学校の男の子とか・・・・・・」
私の聞きたいのはそんな事じゃない。
同じ女として、腹を割って後輩の女性の娘に本当の事を言って欲しかった。
母の勤めていた会社の社長は夫婦で中国人だったから、イントネーションが違うらしい。
そこの社長は30歳くらい年上である。
私はそれが引っ掛かっているのだ。
母は道ならぬ恋愛をしていたのでは無いだろうか❓
父は男だが、女性並みに勘が鋭い。
母をパッと見て一目惚れしたと同時に、辛い恋愛をしていると察した筈である。
そして、その男性から母を奪ったのだ。
そう考えると辻褄が合うのだ。
いくら、愛しあって結婚したからと言って、私は旦那に
「のぞ美❗メシ❗」
と言われたら
「いい度胸してんじゃないか❓誰を呼んでいるんだ❓誰が呼び捨てにしていいって言った❗それにメシはおまえが作るもんだろ❗」
と年上でも離婚届けにサインを書いてハンコを押して、どんなに苦労しても子供を連れて家を出て行く。
そのような口のきき方も分からないし、私を家政婦扱いする男はさっさと捨てる。
それも、父の方が5つ年下なのだ。
私は年上でも下の名前を呼び捨てにする男はバカだと思っているから相手にしないし、結婚した途端にそのような態度を取ったら、さっさと捨てる。
それも、年下なら尚更である。
名字で呼び捨てはいいし、ニックネームで呼んでいるならば分かるが私は男性に下の名前で彼氏になってくれた人でも呼ばれた事は無かった。
母は父に甲斐甲斐しく尽くした。
今、思うと私なら我慢できない。父も凄いし、それの上を行っていた母が凄い❗
私は何か母はやましい事をして来たのではないだろうか❓
という疑念が益々わいた。
そこの社長が風の便りにお亡くなりになったと聞いた時、母は何故かぼんやりしていた。
そこの社長では無いかも知れないが誰かと大恋愛をしていた時に父と出逢って父に行ったのは確かだと思っている。
父も母も、母の前の恋愛の話しはした事が無い。
私は秋田に来てから、母と実は交換日記をしていたのだ。
母に色々と教えてもらいたかったから、私から伝えてしていたが、母は
「今日はお天気がとても良かったです」
位しか書いてくれない。
私は
「母。私に言いたい事は何でも書いて下さい」
と書いているのに。
生き別れの父が先に68歳であの世へ逝った。
それから、母の認知症はどんどん進んで行った。
多分、両親は墓場まで私に伝え無いと決めていたのだろう。
ただ、私としては女性の先輩として、一人娘なのだから、別に驚いたりしないし、母の真実を伝えて欲しかったが、これで良かったのかも知れない。
私は霊感が強いのだが、父は母にだけ夢枕に出て来たが、私には父も母も出てくれない。
多分、驚かせたくは無いのだろう。
一度だけ、封印した能力を使って母に
「母。三途の川、渡っちゃったの❓」
と尋ねると、違う部屋から小さな声で
「これ以上、のぞ美に迷惑掛けたくなかったから、エイッて飛んじゃたの。
フフフ・・・・・・」
と、恥ずかしそうにそう言って離れて行った。
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