幽霊も間違えるのです

2024.7.9

 父と暮らしていた時、父が

「ノン。今日、お父さん疲れたからおまえのダブルベッドで寝たいから、俺の布団でお母さんと寝てくれないか❓」

と確か小学低学年の時、言われたので

「分かった。今日、布団で母と二人で眠るね」

と言って、父と私が先に眠っていて、母が2時間後位にもう一つの布団に入ったら金縛りにあったそうなのです。

 全く動けず、目の前に猫がいたので

「あっちへ行って❗」

と動けないので、イライラしてよ~く見ると背無視の男性でした。

 母は

「あなただ~れ❓」

と開かない口で言ったらスッと消えたそうです。

 その時は何にも感じなかったそうですが、窓を見たら虹色の光があって、それを見た瞬間に気持ち悪くなったけど、金縛りにあって、余りに疲れたので、そのまま、眠ってしまったと私と父に次の朝、言うと、父が

「あっ❗〇〇さんが俺に挨拶に来たんだ❗」

その〇〇さんとは父が支配人をしているホテルに掃除のアルバイトにやって来た、年上の男性だったそうです。

 私は何回も父の勤めているホテルに行ったのですが、その男性とは一度も面識が無いので

「背無視の男性に会った事が無い」

と言うと

「今、勤めているホテルはサウナだろ。ボイラーの周りを一生懸命に掃除してくれるから、いつも〇〇さん❗どうもありがとうございます❗と言っていたんだけど、昨日、お亡くなりになったと聞いたから、手を合わせたんだ。たまたま、お父さん、のぞ美のベッドで眠ったから、間違えていつもの布団の方に現れたんだよ。

 陽子、驚かせてゴメン❗

俺が寝ていたら、ありがとうございます❗とお礼を伝えていたのだけど」

と、父は何人もお亡くなりになった男性たちが、必ず挨拶に来る人だったのです。

 父をスカウトした、会社社長が亡くなった時も毎日、現れるから、手を合わせたら、もう二度と現れなくなったそうです。

 何故、ご自分の奥様やお子様に現れ無いし、他の支配人に現れ無いのに、父にだけ現れたのか、唯一信頼していたからなのです。

 父だけなのです。

社長直々に直接、父の前のホテルにやって来て

「我がホテルの支配人になって下さいませんか❓」

と言われたのは。

 全ての支配人は父がそのホテルを辞めた後、二代目ですから、経理や喫茶店を作った方がいい等、何もしないで、父が書いたホテルのフロントの心得をそのまま、もらって単なる、雇われ支配人ばかりでした。

 父のフロントの心得を今、私の手元に何故かございます。

 約30枚の父の手書きで、面接して、全てホテルのフロントを初めてなさる方々ばかりだったので、人間的な身だしなみの基本から、お客様の身なりで態度を変えない事。

 例えばブランド物のスーツを着ているから、きちんと挨拶して、穴の空いたズボンだからといって、態度を変えない事。

 人は外見で判断するのはマナー違反です。

から、その約30枚の父が書いた物を読んだら、どんな方でも直ぐに、プロのホテルマンになれます。

 こうした事を20代前半でやっていたのです。

 ですから、殆どが年上の部下です。

 年下の部下なら

「〇〇さん。こちらをお願い致します」

と頼み易いでしょうが、いつも父は

「〇〇さん。〇〇さんは元小学校の教師ですよね❓私の力不足で、こちらの仕事を助けて下さいませんか❓」

と全ての方々にそういう口調で仕事を頼んでおりました。

 女性の前でも、誰にも傷つくような事は言いませんでしたから、全ての方々に愛されておりましたが、全ての支配人は父より、年上でしたが、父がオープニングから支配人をしていたのは唯一人でしたので、多分、かなり嫉妬されたでしょう。

 殆どの部下が父よりも年上だった為、仕事が出来ない人々は父にきちんと挨拶するのですが、父が歩く度、女性たちは何故か頬を赤らめながら、挨拶するし、年下の部下は90度にお辞儀をするし、サラリーマンや教師を退職して、夜だけの男性たちも丁寧に挨拶するのに、自分のホテルの支配人になった男性は

「おはようございます」

だけでしたので、ルックスも頭の良さも仕事の出来も敵わないから、外面だけは良くて、違うホテルが困った時、社長が父に頼むのです。

 余りの忙しさに父も嫌気がさして急に辞めたのですが、父の為にサウナを作ったから、もう一度来て下さいと社長が頼むので、サウナなら、少しはリラックスして仕事が出来るし、自分の為に社長が作ってくれたから

「私でよろしければ、もう一度、やります」

と、もう全てのホテルはございませんが、サウナのホテルの支配人を致しておりました。

 10何階建てビルのホテルからたった3階の男性専用のサウナに変わって、父は自分の自由に働いておりました。

 フロントから厨房に入ってラーメンをお客様に作ったり、ボイラーが調子が悪いと自分で直したり、全ての事を従業員と一緒にやっておりました。

 休みの日は何故か、結婚式の司会をやって日給5万円をもらっておりました。

 ですから、その背無視の男性は父にお別れの挨拶にいらしたのです。

 全ての男性たちは上には愛想が良いのですが、そのようなアルバイトのご高齢男性には挨拶した方はまだマシなのですが、無視する男性たちが多い中、街を歩いて見かけると

「〇〇さん❗中田です❗今日のお休みはお買い物ですか❓」

と必ず声を掛けるので、父を慕いました。

 ですから、その背無視の男性も会社社長も、父がもうそのホテルを辞めたのに、亡くなったら、挨拶に来るそうです。

 そんな父も、今は一緒の世界に行きました。

 多分、日本酒で盃を交わしているかも知れません。

 今は父と母は確実にあの世で夫婦になって良かったと思っているはずです。

 私は毎日、父と母に

「今日も元気に生きられて幸せですし、あなた方の一人娘で良かったです❗」

と、朝晩、挨拶しております。

 ですから、小学生の時に

「亡くなった方も、間違えるのだ」

と、分かったのです。

 「〇〇さん。父がお世話になりました。

 本当にありがとうございます❗」

コメントを残す