アウトローヒロイン❗

2025.7.31

　私は中学生の3年間、バスケットボール部だった。

　私の中学校は全員不良と言われていた中学校だったが、私の１年先輩達から、校則は守ろう❗という雰囲気になって、私の学年は余り少なくなっていた。

　3年のキャプテンが顧問の先生が決まらないからバスケットボール部は廃止になりそうだ❗と体育館で泣いていたが、何とか顧問をやる先生が出て存続出来た。

　1年生が男女共、50名以上入った。

　そこで、男子グラウンド外回りの草ボーボー、石ころが転がっている所を50周、女子は25周、休んだり、途中で水を飲んだら、即退部と言われ、私は走った。

　私のクラスメイトが

｢中田さん❗私、バスケットボール部に入ったのに、陸上部ですら、グラウンド内を走っているのに、ボールすら持たせてもらえないから、辞めるわ❗｣

と、帰って行った。

　私は始めからボールを持たせてもらえない事ぐらいは範囲内で、バスケットボールは先ず足腰を鍛えなくてはいけないし、2,3年のレギュラーや先輩達が体育館で練習するのに、一度もバスケットボールの経験が無い私達は邪魔なだけで、走らされる事は分かっていたから、彼女の考えが不思議だった。

　私の頃は水飲んだり、休んだりしたら、即退部という時代だった。

　今では考えられない話だ。

　そして、たったの１日で約半数が辞めて行った。

　私の頃は弱小チームだったが、バスケットボール部で一番話した女の子のお兄さんが6年前にバスケットボール部で、休憩時間に煙草を吸っていたと聞いて、いくら不良でも運動部が煙草吸ったら、もっと苦しくなるのでは❓と思ったが、その当時のバスケットボール部は強かったらしい。

　お兄さん曰く

｢審判が見てなきゃ反則しても、勝ちゃいいんだ❗｣

と、聞いて、対抗相手に一切礼をせずにガン飛ばして、先ずビビらせて、蹴りを入れて転ばせてボールを奪いシュート❗

相手がシュートしたら、腹を殴ってうずくまらせてボールを奪いシュート❗だから、強かったらしい。

　しかし、私の先輩達はきちんとルールを守ってバスケットをやっていたが、顧問の先生が学生時代にバレーボールをやっていたから、教える事が間違っていた。

　逆にバレーボール部の顧問の先生は学生時代にバスケットボールをやっていたので、バレーボール部は2時間ぐらいの練習で函館市内で１番強かった。

　バスケットボールをやっていた人はバレーを教えられるが、逆は相当勉強しないと無理なのだ。

　バレーボールの顧問の先生は次の日、試合なら、約１時間半で練習を切り上げる。

　バレーボールをやる人は瞬発力はあるが、スタミナは少ない事が分かっていたから、練習を長くさせると試合をやる日にはヘロヘロになる事が分かっていた。

　バレーボール部の皆さんが帰った後、残りの体育館でバスケットボール部は早くても夜8時過ぎまで練習して、下から数えた方が良いチームだった。

　私は走るのも、シュートの数もディフェンスもどれも全て１番なのに、一度もレギュラーにしてもらえなかったから、家に帰って、腹筋、背筋、腕立て伏せ、指立て伏せ、親指、人差し指、中指、薬指、最後に小指立て伏せを100回やって、母から買ってもらったバスケットボールで外に出て、ドリブル、ご近所の壁を拝借して、パスの練習、エアーゴールを作って、シュートの練習をしてから、お風呂に入って、夜11時から、ヘッドフォンを付けてエレキギターの練習をした後に寝ていたから、毎日、睡眠不足だった。

　あれだけ練習したのに、一度もレギュラーにしてもらえなかったが、何故か人気だけはあった。

　違うクラスの女の子が私と友達になりたい❗とか、バスケットボール部の後輩が

｢中田先輩❗練習中にすみません❗私のクラスに中田先輩のファンがいるので、今、体育館の外に待っているから、握手してあげて下さい❗｣

と、何回目かで、キャプテンの女の子に

｢また～❓｣

と、言われた。

　レギュラーどころか、キャプテンですら、一度もバスケットボール部の後輩以外の後輩に握手を求められた事がなかったからである。

　そして、先輩１人に後輩１人が付く決まりがあり

｢中田に付きたい人❓｣

と、キャプテンが訊くと、過去に一度も無い、二人の後輩が手を挙げてしまった。

　とうとう帰り道、キャプテンになった女の子と副キャプテンになった女の子とレギュラーになった女の子に

｢ズルイの❗人気独り占めだから❗｣

と、万年補欠の私が言われてしまった。

　私にしたら、逆でしょう❓と思ったが。

　最後の中体連でも、始めはレギュラーが出るから、礼をしたら、部活に入っていない生徒は応援に回るが拍手だけなのに、案の定、20点差を付けられて、私達サブチームと交代すると、体育館が歓声というか、怒号が鳴った。

　知らない生徒達が

｢中田❗おまえが出たんだから、逆転しろよ❗｣

と、全く名前も知らない生徒達が叫ぶ。

　その時、キャプテンだの、レギュラーだのに拘っていたのは私だけだった事に気付かされた。

　バスケットボールをやっている生徒もだが、寧ろやっていない生徒の方が私の練習をみんな見ていてくれたのだ❗

　しかし、中学校の3年間で私は燃え尽きて、高校はバスケットボール部には入らなかったし、バスケットボールも触らなくなってしまった。

　大人になって、レギュラーになった女の子は所謂、大人の事情な事を知るが、私は3年間で出しきってしまったから、悔いはない。

　だから、実力だけではどうする事も出来ないことがあるから、皆さんも、いちいち落ち込まずに好きなことをやり続けた方が良い。

　見ている人は見ていてくれるのだから。